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認知行動療法

認知行動療法(CBT)とは

認知行動療法(CBT)とはどんなことをする治療なのか、まず全体像を簡単に説明します。

人間は状況に応じて、感情が動く反応をします。
人間の反応は、感情、身体で感じていること、考え(評価)、行動の4つの側面に分けて考えることができます。
特定の状況に応じて、特定の気持ちを抱き、体が特定の反応を起こし、ある考えが浮かび、ある行動を起こすわけです。これらの4つの側面は互いが互いに影響を及ぼしあって、反応を形成しています。
どのような感情を抱き、どのような体の反応が起こるかを、人間が自分で意識的に変えることは難しいのです。しかし、どのように考え、どのように行動するかは、ある程度、人間の意識の支配下にあります。これら4つの側面は互いに密接に影響しあっていますから、考えや行動を変えることによって、感情や身体反応を変えていくのが認知行動療法(CBT)であると、まずはおおまかに理解しましょう。

あなたが自分自身をよりよく理解し、自分で問題を解決したり、プログラムで学んだツールを色々な場面で使いこなしたりできるようになってもらいたいのです。さらに、この療法で身につけた技法を活用すれば、今後の人生で起きる様々な問題にも対処できるようになることが期待できます。認知行動療法(CBT)を経て、自分で自分のカウンセリングをできるようになるのが最終的な目標です。

では、ここからは、セッションで具体的にどんな内容に取り組んでいくのかを紹介していきます。

■セッション;感情をどう扱うか
不快な感情を無くそうとすることは適応的ではなく、逆効果になってしまいます。不快な感情も含めて、すべての感情は日常生活の中でとても大切な役割を果たしていて、たくさんの重要な情報を与えてくれる、必要なものです。
しかし感情が、時に激しくなり過ぎたり、コントロール不能になったり、誤った状況やタイミングで起こるようになっていれば、それはとても苦しいものになります。

セッションでは、どのようにしたら不快な感情に耐え、理解できるようになるかを学んでいきます。
また、感情に対する自分の反応の仕方がどのように症状を引き起こしているかを理解できるようにしていきます。
感情がまさに起こっている今現在の文脈の中で、感情体験をしっかり感じて理解できるようにしていきます。

ここで感情の圧倒的な感じを弱める方法を紹介します。
感情を動かす体験を4つ(感情、考え/評価、行動、身体で感じていること)に分解するのです。これができると感情は圧倒的ではなくなってきます。自分の感情体験の要素4つの全てに気づけるようになることが大切です。なぜなら、それらはお互いに影響しあって強まったり弱まったりして、その場その場で体験に影響して変えていくからです。いつ、どこで、なぜ感情体験が起こるのかを把握することは重要です。

次のステップでは、感情体験のモニタリングをしていきます。
感情体験のきっかけ、その体験での自分の反応、そしてその結果をモニタリングすることで、その感情体験がどうして強烈なものになったり、圧倒的になったり、苦痛になったりするのかを理解できるようになり、感情体験が起こる全体的な流れに気づけるようになります。
感情を引き起こすきっかけがわかってくれば、感情そのものや、感情に対する自分の反応をより良く理解できるようになるのです。

■セッション;‘非断定的な感情への気づき’

感情を、脅威を生む嫌なものだと見れば見るほど、そしてまた、感情を悪いものと見たり、感情を感じる自分自身をダメな自分と捉えれば捉えるほど、どんどん悪循環へ陥ってしまいます。
反対に、どのように感情体験が進んでいくのかを理解し、感情体験があった時に始めに起こる感情反応が自分にとって重要なことが起こっているかもしれないと警告してくれていると受け入れることで、悪循環を止めることができるのです。

感情についての何らかの断定を手放すこと、不快な体験を不快なものとして受け入れ、それに触れてとどまること、感情が起こった時に起こったままにしておく方法を学ぶこと、その感情はそのようにあるがままでいいと認めること、その感情を減らそうとするでもなく、変えようとするでもなく、良し悪しを断定しようとするでもなく、感情反応が出たり消えたりするのをそのままにすること、そこから逃げようとしないことです。
そうすれば、感情が持つ支配力は徐々に弱まっていくのです。

自分の感情反応がその場の状況を正確に反映しているかを見極める唯一の方法は、現在という状況に‘気づき’をとどめて注意を向けることです。自分の感情に対する瞬間瞬間の断定や反応というものは、実際にその場その時点で起こっていることとは、殆ど関係していないことが多いものです。

むしろ、感情に対する反応は、過去に起こったことや、将来どうなるだろうと考えたことに影響されています。感情によって、以前に同じ感じを抱いた時の記憶が呼び覚まされ、自分がこれから取りうる対処法や、これから起こりうる事態を考えるようになります。
このようにして、感情が起こるとすぐに、今、目の前のその場所でまさに起こっていることから注意が離れてしまい、どこか彼方の過去や未来へと注意がそれてしまうものです。「同じようなことが前にもあった」、「また同じようなことが起こるに違いない」というふうに。

目の前に今ある情報こそが唯一の正確な情報です。過去や未来に注意を向けてしまうと、今、目の前にあるとても大切な情報を見逃してしまいます。感情を理解し、感情が何を伝えてくれているのかを知るために、今まさに起こっているありのままの感情体験に気づく必要があるのです。
感情を適切な文脈(前後の流れのなか)に位置付けるために、過去や未来から抜け出して、その場の瞬間に自分をとどめることが大切なのです。

パニック障害(パニック症)の患者さんの例で考えてみましょう。
今まさに電車に乗っているとします。電車が混みはじめ、以前にパニック発作を起こした時のことを思い出します。体に恐怖のうずきが走るのを感じ、発作が起こるに違いないと確信しはじめ、恐怖によって発作を起こした過去の苦痛な記憶が呼び覚まされ、最悪の事態が起こるのだと想像しはじめます。

患者さんは見落としています、この瞬間、恐怖は単に今の状況と過去の記憶を対応させてつなげているに過ぎないということを。
今この瞬間に現実的な危険は存在せず、実際のところその感情は誤った警報です。過去や未来のことに心が奪われてしまうことで、今この場の現実を見逃してしまいます。

実際にはパニック発作を起こしていないし、実際の危険はどこにもなく、この瞬間に起きている事実は、電車で目的地にだんだんと近づいているということです。
目的地に着いたときにもまだ過去や未来にどっぷり浸かっているようであれば、今回はパニック発作を逃れたけど、次は必ず発作を起こすだろうと考えることにつながります。
実際のところは、密封された電車に乗ってパニック発作を起こさずに目的地にたどりついたというのが、今この瞬間の状況についてのより正確な捉え方です。

現在の瞬間に自分自身をとどめることができないと、その状況から学ぶことができず、その代わりに過去の苦痛な記憶や将来の破滅についての心配にとらわれてしまいます。瞬間瞬間に起こりつつある自分の反応を観察することが大切なのです。まさにその瞬間に注意を向けるのです。

セッションでは、これらをふまえて‘非断定的な感情への気づき’の練習をしていきます。

■セッション;認知再評価(認知再構成)

出来事が起こったり、ある状況におかれたりすると、人間は自動的に(気づかずに)解釈をします。この最初の解釈は自動評価(自動思考)と呼ばれ、感情体験に対して決定的な影響を与えます。

長い年月をかけて、人は状況や出来事を評価する仕方やスタイルを確立させていきます。研究によれば、感情障害のある人は、ネガティブで悲観的な評価や解釈をしやすいということが明らかになっています。こうしたネガティブな解釈が、気持ちや行動に影響を与えてしまいます。さらに言えば、評価/思考が感情に影響を与えるように、日々の生活での気分や感情も、状況や出来事を解釈し評価することに影響を与えます。

セッションでは、よくある自動評価(自動思考)を見つけること、名づけることを練習していきます。

ここでは2つのよくある自動評価(自動思考)を紹介します(セッションでは更に多く紹介します)。
・過度の予測(結論への飛躍)
ネガティヴな出来事が起こる可能性を過剰に高く見積もること。全く兆候がなかったり、その兆候がごくわずかな場合であっても、ネガティブなことがきっと起こるだろうと解釈すること。その他の、よりありそうな結果が起こる証拠を無視すること。

・破局視(最悪思考)
その他の可能性を考慮しないまま、最悪なシナリオが起こりつつあると勝手に予想すること。それが起こった際に対処できないと自分を過少評価すること。

例)パニック障害(パニック症)の患者さんによくある自動評価(自動思考)
映画館で映画を見ていたらパニック発作を起こしはじめる→発作が連鎖的に起き、ついに呼吸が止まって死ぬ

このプログラムでは、どんな時にこうした硬直した自動評価(自動思考)に陥っているのかを認識して、思考の柔軟性を高めていくことが目標となります。
自動評価(自動思考)の落とし穴から抜け出すには、自分がしている評価に注意を向け、それを唯一の真実としてではなく、状況について考えられるいくつかの解釈のうちの一つとして捉えることです。
最悪なことが起こりつつあって自分はそれに対処できないと自動的に考えるのではなく、他の解釈に気づくことが大切なのです。
最悪のケースを想定したシナリオは消えないかもしれませんが、それは他の解釈とともに同居できます。他の解釈についても考え、それを受け入れていくことです。

セッションでは、新しい別の評価や解釈を生み出す方法である認知再評価(認知再構成)のやり方について詳しく学んでいきます。認知再評価(認知再構成)ができるようになれば、感情を取り扱い可能なものとして捉えられるようになるのです。

■セッション;感情回避について理解しよう

感情を回避すると、現在の嫌な感情が維持されてしまいます。感情を回避する3つのパターンを説明します。

①微妙な行動回避

全く回避するのではなく、部分的に回避するというものです。例えば、社会不安障害(社交不安症)の方で、社会的な集まりに参加は一応したが、人と目を合わせないようにして場をしのいだ、というのがそうです。

②認知回避

苦痛なことを考えたり、思い出したり、注目したりするのを回避するためにとる考えや行動のことです。
例えば、本を読む、音楽を聴く、テレビを見るなどして気をそらすパターンもあれば、別のことを考えて意識をそらすパターンもあります。思ってもいないことを自分に言い聞かせるのも認知回避です(嫌いなことを好きだと自分に言い聞かせたり、落ち込んでいる時に幸せだと自分に言い聞かせても上手くいきません)。

③安全信号の利用

自分を落ち着かせるために携帯する小物や特定の人を安全信号と言います。安全信号に頼っていると、その状況が本当は危険ではないことを学習できなくなります。また、実際には感情に対処する能力が自分にはあるにも関わらず、安全信号のおかげで何とかなったと思ってしまいます。

ここでは、不潔が怖く、手洗いがひどい強迫性障害(強迫症)の患者さんの例で考えてみましょう。

①微妙な行動回避

細菌が体について汚れるという患者さんが、一応は外には出るようにはしたものの、雑踏の中では手に細菌がつくのを防ごうとポケットに手を入れておくようにしていました。

②認知回避

自分は清潔だと常に自分に言い聞かせていました。また、家に帰った後で自分がどれだけ沢山手を洗ったかを思い出して自分を安心させようとしていました。

③安全信号

消毒液を常に持ち歩いていました。

セッションでは、あなたが行っている感情回避がどんなものであったのかを一緒に振り返ります。そして、これからは感情回避に気付いて記録する練習をしていきます。感情回避を止める時が来たのです。


■セッション;感情駆動行動について理解し、反対の行動をしてみよう

強い感情を体験している時に、その気持ちの強さを和らげようとする行動を感情駆動行動と言います。

強い感情は特定の行動をとるように私たちに伝え、駆動させます。
例えば、車が突っこんでくるのを目の当たりにしている時、恐怖で逃げようとする行動は感情駆動行動です。これは適応的です。
しかし、例えば人前で何かの発表をする時に、車が突っ込んでくる時と同じような反応をするのは適応的ではありません。適応的でない感情駆動行動は長期的には嫌な気分をもたらします。

感情駆動行動に従って行動することは、感情にまつわる苦痛を和らげる働きをして、短期間だけ、嫌な気持ちが悪化するのを避ける助けとなるため、それを役に立つものだと勘違いしてしまいます。
感情駆動行動を繰り返す問題点は、それが悪循環になる点にあります。悪循環になってしまうと、感情駆動行動は状況に関わらずいつでも起こるようになって、非生産的なものになり、自動的に起こるようになってしまうのです。

これからのあなたの目標は、自分の感情駆動行動を見つけられるようになることです。そして、それが適応的か、逆に適応的でないかを認識できる能力を高めることです。

その次のステップとして、感情駆動行動に対して、身体の動きを伴った代替行動をする練習をしていきます。例えば、恐怖に対して、萎縮するのでもなく、逃避するのでもなく、怖くないと自分に言い聞かせるのでもなく、「口笛を吹く」などの身体の動きを伴った行動をするということです。
感情の悪循環を断ち切り、感情体験を変容させるうえで最も有効な方法は、感情に反応する時に、それまでとは全く違った行動をしてみることであることがわかっています。行動を変えることは、感情体験を変え、その結果として思考を変えることにもつながるのです。

セッションでは、あなたの感情駆動行動がこれまでどんなものであったかを一緒に振り返ります。そして、どんな代替行動をこれから取るようにするかも一緒に考えていきます。

■セッション;身体感覚を理解し、向き合う練習をしよう

身体感覚も感情体験に影響します。身体感覚は感情を本来よりも強いものだと誤解させてしまうことがあるのです。
セッションでは、感情体験の最中の身体感覚に‘気づく’練習をしていきます。
自分自身の身体感覚がその状況を実際以上に脅威と感じさせていたことに気づけるようになることが目標です。

次に、身体感覚に‘向き合う’練習をしていきます。
身体感覚それだけを見つけて感じられるようにするのです。そして、身体感覚に対する自分の解釈を吟味し、その身体感覚が本当に目の前にある危険を反映したものなのか、単なる自律神経の反応なのかを見極めるようにしましょう。

さらには、安全な環境で身体感覚に慣れる練習をしていきます。
これをやれば、身体感覚と脅威との結びつきをゆるめられるようになります。

■セッション;感情曝露の練習をしよう

激しい感情反応をもたらす状況に向き合う練習をしていきます(状況感情曝露)。
例えば、パニック障害(パニック症)の方であれば密閉された空間に一定の時間いる、社会不安障害(社交不安症)であれば見知らぬ人と話をしたり、複数の人がいる状況で会話に加わる、というふうに。
あなたがどんな状況感情曝露をしていけば効果があるのか、セッションで一緒に考えていきましょう。

次に、静かな環境で目を閉じたうえで、大変な体験となった出来事を細部にわたって想像する練習をしていきます(想像感情曝露)。
出来事が進んでいくその時々のイメージ、思考、気持ちを細かく見ていくのです。パニック、強い悲しみ、恐怖や不安、怒りなど、体験にまつわる感情をじっくりと味わうようにします。これも、あなたがどんな想像感情曝露をしていけば効果があるのか、セッションで一緒に考えていきましょう。

*『不安とうつの統一プロトコル(診断を超えた認知行動療法)』(診断と治療社)、『認知行動療法実践ガイド~基礎から応用まで―ジュディス・ベックの認知療法テキスト』(星和書店)から抜粋しましたが、大幅に改変、一部意訳しています。